INTERVIEW
“暮らし” と “遊び” がよい仕事につながる!? JETの「働き方」
「デザインとプログラミングで、最大限の価値を提供する。」そんなキャッチコピーのもと、2011年、岡山県に誕生したDIGITALJET(以下 JET)は、たった数名のメンバーが、フルリモートで自由に働きながら、さまざまな企業におけるデジタルの中枢を担っている会社です。
通常、「モノづくり」といえば、「納品」だと思われがち。でもJETはちがう。JETの仕事は「最適なモノをつくり続ける」ことなのです。
「最適」とはなにか?
「つくり続ける」とは?
今まで、「自分たちのことをまったく語ってこなかった」というメンバーにさまざまな質問を投げかけていくと、JETが持っている哲学のようなものが見つかりました。
さまざまな働き方が存在する現代。読んだ人にとって、生き方、考え方、なんらかのヒントになれば幸いです。
社員の健康と環境に投資する
大木:今回は、みなさんの働き方に焦点を当ててみようと思います。JETは、コロナよりずっと前からフルリモートで働いているんですよね?
真崎:そうですね。創業時からずっとリモートです。なので、もう10年以上前になります。
大木:最初から、「事務所つくろう」っていう話にはならなかったんですか?
真崎:最初から「事務所はつくらない」と、ハッキリ決めていました。事務所を構えるための費用や、家からの移動時間・・・大きく捉えると、それらの費用や時間は、お客さまからいただくことになります。僕たちがそこにお金や時間をかけることで、果たしてお客様に提供する価値が上がるのか?事務所にお金をかけるぐらいなら、別のことに使おうと思いました。
大木:そこを最初に話し合えるってすごいですよね!逆に、「ここはしっかり課金していこう」と思っているポイントはありますか?
真崎:一番投資したいと考えているのは、「社員の健康と環境」です。僕たちは、知識で価値を生み出すナレッジワーカーなので、提供するのは「人」なんです。だから、一番大事にしないといけないのは、「人」。人が急に辞めたり、仕事ができなくなってしまうと、お客様に迷惑がかかってしまいます。社員一人ひとりが会社でずっと長く働けるために、一番最初にお金をかけたのは、実は椅子なんです。僕たちは、毎日ここに座って、価値を提供するので。アーロンチェアの一番高いやつを、一切迷いなく注文しました。
大木:いくらぐらいしたんですか?
真崎:う〜ん・・・忘れてしまったのですが、1脚15万以上はかかりましたね。
大木:それって、会社提供なんですか?
真崎:もちろん。椅子もパソコンも机もです。
大木:ほか、会社として課金していることはありますか?
古里:健康診断ですね。一般検診以上の有料健診でも、本人が受けたいものがあれば会社の全額負担です。メンバーの健康が一番大切なので。僕は健診で中性脂肪の数値が高く出てしまったのですが、これを機に今年からメンバー全員、福利厚生としてパーソナルトレーニングを受けることにしたんです。
大木:え〜〜!いいなぁ〜。福利厚生でパーソナルトレーニング!
お互いの予定を共有するけど、管理はしない
大木:トレーニングって、お仕事が終わった後とか、休みの日に行ってるんですか?
古里:平日の昼間に行くこともありますよ。ふたりは、今日このあと行くんだよね?
大木:ほぉ〜!フリーランス並の自由さ!!! 普通の会社って、いくらリモートだと言っても「就業時間内は仕事してください」って制限がありますよね。そもそもJETには、時間に関する制限がないんですか?「仕事をちゃんとしてくれたら自由」って感じ?
栩平:オフィスを持たないのと一緒の考え方だと思います。なぜ世の中の会社に、「オフィス」が存在するのか。それは、「社員の管理をしたい」というのもひとつあると思うんです。決められた時間帯にちゃんと出社して、ちゃんと仕事してるかどうかは、一箇所に集めた方が管理しやすいじゃないですか。そういう意味では、僕らはお互いのことを管理してないですね。そもそも僕らはお互いを評価もしないので、全員給料も一緒です。同じレベルの人だけ採用しているので、「だったら、やるでしょ」って感じです。勤務中に古里が出かけても、僕が抜けても、何も思わない。
大木:そっかぁ〜。そんなに信頼できるメンバーのみで構成されている会社って、奇跡ですよね。ちなみに、日報的なものはありますか?
古里:あってもいいと思うけど、誰が見るんだろう(笑)
栩平:あったら、案外楽しめるかもしれないですけどね。
真崎:僕は、自分から発信しないタイプなので、日報あったらいいかもですけど(笑)
大木:普通の会社は、ありますよね?私も会社員時代は、毎日日報書いて提出してましたよ。内容によっては、めっちゃ怒られたりしてました。
栩平:日報を何のために書くか・・・なんですよね。一行日記があると、コミュニケーションもとれておもしろいかもしれないけれど、管理するための共有じゃないですね。予定は共有のGoogleカレンダーに入れて共有してますが、管理目的ではありません。「あ、今、真崎はPTA会議出てるんだ〜お疲れ様です」って感じです。
大木:仕事以外のこと、たとえばPTAの用事とかも共有してるんですか!? そういえば、さっき古里さんは、真崎さん、栩平さんのパーソナルトレーニングの予定を把握されてましたよね!?
真崎:そうですね。必要な会議をスムーズに進行するためにシェアしている感じです。「これやってるから、あとは任せた」って。
大木:Googleカレンダー以外に、会社をうまくまわすために使っているツールはありますか?
真崎:いろいろありますが、一番はRemotty(リモティ)ですね。リモートワークのためのバーチャルオフィスなのですが、スタッフ同士のコミュニケーションに使っています。ほかは、スタッフそれぞれが判断して、仕事に役立つものであれば、使うのを止めていないです。
栩平:基本的に「オンラインで使いやすいかどうか」は重視していますね。最近で言うと、メインバンクを替えました。オンラインで使いづらかったので。普通、融資のことなどを考えたら、地元の銀行を使うのが王道なんですけど、僕らは融資を受ける予定もありませんし。どれだけオンラインで使いやすいかを重視します。
経理は税理士さんにおまかせしているのですが、税理士さんにお渡しするためのレシート撮影もツールに任せようかな〜とか。「自分たちがやらなくていい仕事」を圧縮するためのツールは、積極的に導入しています。
自分たちが「幸せであること」が価値
大木:みなさんの毎日って、どんな感じですか?何時に起きて、何時まで働いて、何時に寝るのでしょうか?
真崎:僕は、朝6時には起きて、6時半にはパソコンの前に座っていますね。何もなければ、そのまま18時まで仕事をして。その後は何もしないって感じです。
大木:夕方からはゆっくりされるんですか?
真崎:クライアントさんに依存するんですけど、夕方以降にミーティング等がなければ、家族でゆっくりします。
大木:食事はどうしてますか?
真崎:今、パーソナルトレーニングを受けているので、決まったものを食べるようにしています。家で自分でつくって、パパッと食べますね。
大木:何もお仕事がない日の、夜の過ごし方は?
真崎:ずっと子どもと何かやってますかね。一緒にゲームしたり、日中のやっていたことの話をしたり、宿題をみたりとか。子どもと一緒にお風呂入って、21時には一緒に布団に行って、22時には寝ちゃいます。
大木:なんて平和なの・・・! 土日はどうしてますか?
真崎:僕、DIYが好きなので、家族でホームセンターめぐりしたり。昨日は、お墓参りと掃除をしたあとに、長女の「推し」のグッズを買いに行ったりしてました。土日は、ほとんどパソコンの前にいません。
大木:エンジニアさんって不健康なイメージがありますけど、むっちゃ健康的で、家族とも仲良し・・・すごい。
真崎:カッコイイことを言うと、自分たちが健康であること、幸せであることも、お客様に提供する価値になると思っています。僕も、会社員のときは不健康な生活をしていたのですが、そうなると価値が出せないんですよね。
大木:関わってくれる人は、幸せな人の方が絶対いいですもんね。しんどそうにしている人にはお仕事頼みたくないですもんね。栩平さんはどんな生活をしていますか?
栩平:結構普通の毎日だと思います。7時に起きて、8時に仕事をはじめて、18時に終えます。寝るのは、23時ぐらいです。来週は1週間ぐらい、東京に行くので、その調整のため今週の土日は仕事しようかな〜とか、そんな感じですね。
遊びが仕事につながっていく
大木:栩平さんは、カメラが趣味なんですよね。趣味も充実している感じですか?
栩平:カメラと動画と撮影にハマっていて、最近はドローンも買って飛ばしています。ハマったきっかけは、カメラをメインサービスにされているお客さまに出会ったこと。それまでカメラの知識が全然なかったのですが、調べていくうちに興味が湧いて、ハマっていったんです。
大木:もしや・・・カメラも経費ですか!?
栩平:はい。僕はプログラマーなので仕事にカメラを使うことはないのですが、カメラのアプリを作ることはあって、その場合にカメラの基本的なしくみは理解する必要があります。なので、カメラも一部は経費にしています。最近思うのは、遊びが仕事になっているっていうことです。僕、最初は遊びでホームページをつくっていたんですよね。妻がバンドをしているので、交流のための掲示板をつくったりもしました。遊んでいるうちに、これを仕事にしたいな〜って思ってきて。
最近は毎日インスタを更新しているんですが、これも実験なんですよね。「オレの作品みてくれ!」ではなくて、「このパラメーター変えたらどう見えるんだろう」「動画って、どういう比率で見えるのがベストなんだろう」って。ただ、インスタの研究になってます。
大木:なるほど〜。やっぱり、遊ばないといけないですね。
栩平:「将来、モノになるかどうか分からないモノ”」ってあるじゃないですか。僕は、iPhoneを発売初日に買った人間なんですけど、最初はひどかったですよ。全然動かない、電話できない、何もできない。費用対効果で言うと、全然ダメでした。でも、「アップル好きだし、買ってみよう」って思ったんです。携帯としては意味をなさない鉄の塊だったんですけど、あのとき自分でアプリを動かして遊んでいたおかげで、法人化した時に仕事になったんです。
将来役に立つかどうかなんて、分からないです。最近では、電気自動車のテスラの非公式APIで車が制御できたら楽しいな〜って思っています。投資したモノが将来的に人気爆発して、その商品を絡めたサービスが売り上げの半分を占めるかもしれない。だから、遊ぶためのお金はたくさんつかっています。
大木:次は経費でテスラですか(笑)! 古里さんの毎日はどんな感じですか?
古里:みんなの日常を聞いてると、おもしろいですね。僕も普通は8時頃から仕事をはじめて、19時頃には終えています。朝夕、子供の送り迎えをしているので、夕方には一度席をはずします。子供を送るついでにスタバに寄って、コーヒーを買うのも日課ですね。お昼は家で食べることが多いですが、お店のカレーをテイクアウトすることもあります。打ち合わせが多い日もあれば、コード書いている日もあります。夜は、勉強会に参加する日もあります。寝る時間はまちまちですが、24時〜2時ぐらいまで起きていることもありますね。
大木:この中では、古里さんが一番夜行性なんですね。
古里:本読んだり、仕事関連の調べ物や準備をしたり。今夜は、近々開催される大きなイベントのオンラインミーティングに参加します。
知見を掛け算すること
大木:今回お話を聞いてみて、JETのみなさんが、想像以上に健康的で幸せに暮らしていることに驚きました。とっても理想的なライフスタイルだと思います!
古里:以前は、物理的に会社に通勤し、夜遅くまで働く企業に勤めてました。働く場所に拘束され、時間に拘束され・・・。そういう働き方、JETはしないですよね。
大木:たまに「忙しい自慢」する人、いるじゃないですか!? 「スケジュールパンパンです。昨日も2時間しか寝てないで〜す!」みたいな。そういう人は「ダサい」って感じですか(笑)?
真崎:「時間をかけて出すしかできないの?」って感じはしますね。
古里:価値観の違いじゃないですかね。僕たちはそこに、カッコよさを感じないです。
真崎:「これ、ソッコーできたよ〜」って言う方がカッコいいですね。
栩平:僕ら、今の倍働いたら2倍稼げるかもしれないですよね。でも、なぜ、働かないのか。実は年齢的なものもあるんじゃないかなって思っています。20代だったら、馬車馬のように働いて、ひたすら知識を詰め込むのもアリかもしれないです。でも、僕たち30〜40代は知識をアップデートしないと価値が落ちるんですよね。だから、余った時間にみんなで遊んで新しい知見を得て掛け算するんです。
プログラミングだけならできる人は沢山います。なので、違うところと掛け合わせた方が、将来の価値を出しやすい。DIY✖️プログラミング、カメラ✖️プログラミング、めんツナ✖️プログラミングが繋がることもあるかもしれない(笑)遊んでいると、全然違う価値がつくれると思うんです。
▼まとめ
私の固定概念かもしれませんが・・・IT業界って不健康なイメージがあります。夜中に作業して、朝方仕上げるスタイルも多いのかなと思っていたのですが、JETは全然違っていました。朝早く起きて、健康的に、家族ともコミュニケーションを取りながら、幸せに働く。「それが、お客様にとっての価値でもある」と言い切れるって、とっても素敵です。
次回のインタビューテーマは、「JETが望む社会とは」です。お楽しみに♪
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取材・執筆: せいかつ編集室 大木春菜
愛媛県在住の「ファンづくり」に特化した編集者・ライター。ブランディングマガジン「せいかつクリエイト」主宰。
撮影: リリー フォト 徳丸 哲也
撮影場所: ゲストハウス三津庵(ミッタン)